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2021.08.02 | ささ とも

ヒロシマを描いた『光のうつしえ』の英訳本が世界に伝える“命の灯火”

今年も8月6日を迎えます。8月6日と聞いて「広島に原爆が投下された日」と思いつく子どもは日本に、世界にどれだけいるのかな、とこの本を読んで、ふと頭に浮かびました。

児童書『光のうつしえ』(講談社、2013年刊)は広島の原爆投下について被爆2世の作家、朽木祥さんが書いた小説です。今年3月、この英語版『Soul Lanterns』がアメリカの大手出版社ペンギン・ランダムハウスから刊行され、世界の子どもたちの手に届けられています。

小説は、原爆が投下された25年後の広島が舞台となっています。毎年8月6日、広島の原爆ドームの前を流れる元安川では、原爆で亡くなった人の名前を記した色とりどりの灯籠が流されます。主人公の少女は、毎年2つの灯籠を流す母の姿を幼いころから見てきました。小学校6年生になって、1つの灯籠に名前が書かれていないことに気づいて不思議に思ったことから、この物語がはじまります。

小説には原爆投下の是非を問う内容は書かれていません。それがアメリカの出版にいたった理由かもしれません。アメリカの書評誌、カーカス・レビューは本書をいち早く取り上げ、「原爆投下による悲劇的な結果と余波について、作者の正直な目で書かれている。これはフィクションだが、喪失・後悔・孤独・悲痛を描いたストーリーは情感豊かで力強い」と述べています。ほかにも児童図書センター紀要(Bulletin of the Center for Children’s Books)では、この日本小説の翻訳版は、学校で広島の原爆投下について話し合うとき、日本人個人の視点から書いた資料として貴重なものだ、と評されています。

原爆投下に向けた世界の視点は、2016年に現役のアメリカ大統領としてはじめてオバマ氏が広島を訪問したことで大きく転換したように思います。今、世界がこの小説を必要としている理由は、原爆投下の物語を2度と繰り返してはいけない歴史的悲劇として捉えられているからでしょう。

実際に広島を訪れたことがあるアメリカ人の読者はアマゾンのレビューでこう綴っています。「この作家は、(原爆投下について)善悪や説教じみたことは書かず、大勢の罪なき人々の命を一瞬にして奪った悲劇、そして被爆の影響でその後この世を去った人々の悲劇を被爆2世の子どもたちの目を通して伝えている。怒り・敵意・暴力が多くの国ではびこる現在に、彼女のメッセージは非常に大切だ」

今年、原爆投下から76年が経ちました。この本を通じて、平和と命の大切さを子どもと、世界と、共有してみてはいかがでしょうか。

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ささ とも
ささ とも(ささ とも) 地球リポーター

神奈川県在住。翻訳者、ライター。 2010年からThink the Earthのリポーターとして世界の持続可能な取り組みのニュースを発信。気候変動、エネルギー、生態系など幅広い分野で世界の動きを追っていきます。翻訳書『ポストキャピタリズム:資本主義以後の世界』(東洋経済新報社)など。

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