contents
ファッションの「エシカル度」を世界基準で評価するサイトがオープン
デジタルネイティブであるZ世代は、ECサイトで服を買うことに抵抗がない世代だといわれます。インスタなどSNSで幅広く情報収集し、気に入った服に関しては商品を購入した第三者の本音投稿もチェックし、立体的に情報収集してから買うと聞いて感心しました。さまざまな見方を比較検討して、本当に自分に似合う服、欲しい服を納得するまで探すことは大事ですよね。
何事も検索エンジンで情報を得られる時代ですが、実はファッションの製造過程については原料の調達から廃棄まで、まだまだ消費者への情報公開が進んでいません。ファッション業界のサプライチェーンが人件費や原材料の安い国を求めて世界に広がり、製造過程がブラックボックス化してしまっているという課題があります。服の大量生産や大量廃棄に対して規制や罰則を設ける国も出てきていますが、消費者が情報開示や説明責任がうやむやなブランドの服を“買わない”選択をすることは、最も大きな効力があります。
生産者のわかる食べものの方が安心できるように、服に関しても、各工程で誰がどんなふうに関わって作られたのか、“第三者の本音投稿”をチェックして選べるシステムがあるといいですよね。
ウェブサイトには日本の約390ブランドを含め、世界のおよそ6200ブランドのエシカルデータをストック。まずは知っているブランドのエシカルスコアから検索してみよう
日本でその仕組みづくりの一歩を踏み出したのが、UPDATERです。2021年にみんな電力から社名を変更し、“顔の見えるライフスタイル”を掲げて事業を多角化。昨年6月に世界最大のエシカル評価機関であるオーストラリアのgood on youと業務提携し、年末にShift Cのサイトをリリースしました。
good on youの評価システムは、業界の専門家や有識者、非営利団体が協議を重ねて開発し、その後も改善しながら使っているもので、データはアメリカ、カナダ、ヨーロッパなどで毎月数十万人に活用されているそうです。
指標は大きく「人間」「地球」「動物」の3分野に分かれていて、項目は児童労働や強制労働の有無、公平性や多様性への配慮、使用繊維の環境負荷、ビジネスモデルの持続可能性、エネルギーの使用状況や水源・水質への影響、廃棄物の処理方法までとにかくたくさんあり、全部で900以上に上ります。日本人も含む各国から集まったアナリストが厳格なメソッドに基づき、世界の約6200のブランドを公正に評価、その取り組み姿勢を格付けしています。
%だそう。評価方法はこちら
現在、ブランド名を入力して検索し、good on youの評価サイトに飛ぶと解説は英語のままのページもありますが、初夏には全ブランドの日本語翻訳版が出そろう予定です。また、「気になるブランドのスコアを知りたい」場合はgood on youに評価を依頼できるので、「ぜひリクエストしてください」とのこと。
Shift Cは服の購入時にエシカルスコアを検索してから購入を判断するような世の中にシフトすることを目指し、サービスの整備を進めています。データはマイクロソフトやファーフェッチ(ラグジュアリーブランドのオンラインプラットフォーム)などのプラットフォームとの連携例も多いので、今後はデータ連携を広げたり、さらに将来的にはブロックチェーン技術を用いて製品のデジタルパスポート(原料調達からリサイクルまでライフサイクル全体の電子記録)と紐づけるサービス展開などの構想もあるそうです。
もともと不都合な情報を流さない企業サイトを鵜呑みにせず、“第三者の本音投稿”もチェックする習慣が身についているZ世代などは、サービスが整えばエシカルスコアをチェックする新習慣も難なく取り入れてしまいそうな気がします。これからが楽しみです。
地元の美術館・新聞社を経てフリーランスに。東京都国際交流委員会のニュースレター「れすぱす」、果樹農家が発行する小冊子「里見通信」、ルミネの環境活動chorokoの活動レポート、フリーペーパー「ecoshare」などの企画・執筆に携わる。Think the Earthの地球ニュースには、編集担当として2007年より参加。著書に『未来をはこぶオーケストラ』(汐文社刊)。 地球ニュースは、私にとってベースキャンプのような場所です。食、農業、福祉、教育、デザイン、テクノロジー、地域再生―、さまざまな分野で、地球視野で行動する人たちの好奇心くすぐる話題を、わかりやすく、柔らかい筆致を心がけてお伝えしていきたいと思っています!