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実は楽しい冬キャンプ 焚き火を通じて家族の絆と自然の豊かさを感じよう
キャンプと言えば、夏のイメージですが、群馬県北軽井沢でキャンプ場「スウィートグラス」を運営する有限会社きたもっくでは、2012年からキャンプ場の通年営業を開始しました。北軽井沢の冬は、雪は決して多くありませんが、凍てつく風が吹き、寒いときでマイナス20℃を下回ることがあります。また、首都圏からは車で2時間以上かかり、路面が凍結します。
スウィートグラスが冬キャンプをはじめた背景には、「自然に従う生き方」という理念を推し進めることと年間を通じた収益を確保し、冬季に雇用を維持することで優秀な人材を確保するという経営面の双方がありました。現在では冬キャンプは定番化し、北軽井沢に訪れる人々を四季折々の自然で迎え入れるキャンプ場に進化しています。特に雪が降ると予約が一気に集まるそうです。
冬キャンプは、まず家族で力をあわせて雪の上にテントを建てます。ペグが地面にささらない、テントの下の雪が溶け、水没するなどの冬特有のトラブルがあります(そのため、テント下に敷く、すのこの貸し出しを行っています)。寒さの中でのアウトドア料理。食事をほくほくと食べながらみんなで暖まり、家族の絆が深まっていきます。キャンプは「家族再生」の場を体現しています。
難しい寒さを逆手に取ったイベントやアクティビティもあり、定番はスノーモービル乗車体験。それ以外にも、スノーフラッグや雪上綱引きで競い合う冬の運動会、様々なワークショップが体験できる2泊3日のホワイトフェスタ、自然学習体験イベント「SGおしぎっぱ隊」による火おこしからはじめる炭作り、動物の痕跡を追いかけ冬の生き物の暮らしをのぞくネイチャーハンターなど。スタッフの挑戦と自然への好奇心から毎年のように新しいアクティビティが生まれています。
何よりも楽しみなのは冬キャンプの中での焚き火です。寒さの中で赤々と燃える炎で体も目も暖まり、火の周りで自然と家族が集まり、寛ぎ、語らいます。この風景が、きたもっくを代表する施設となった焚き火に集う宿泊型ミーティング施設「TAKIVIVA」のヒントになったそうです。
TAKIVIVAで使われる薪も、そして、施設で利用されている材木も、きたもっくが自社で管理する二度上山(群馬県長野原町・面積約240ha)で伐採されたものです。できるだけ木を伐らずに残し、山の多様な役割を考えながら計画的に伐採する自伐型林業を実践しています。長年地域の自然環境を活用した場づくりを行ってきたこと、また、木材の利活用や養蜂など循環型の事業を行うなど山間地域の将来を考えた取り組みの全体像が評価されて、2021年にはグッドデザイン金賞を受賞しています。
TAKIVIVAは普段は企業研修や団体の貸切専用ですが、一般向けに開催したイベント「Takivi-Do Camp」が8月に開催されます。暑い夏、涼しい北軽井沢で過ごし、みんなで美味しい料理を作り、少し肌寒くなる夜には、焚き火で暖まれます。筆者も5月に開催された「Takivi-Do Camp」に家族で参加してきました。心も体も自然にほぐれ、日中は青々とした空の下で子供たちは自由に走りまわり、夜は焚き火に薪をくべながら変わりゆく火を面白がりました。家族全員が自然のつながりを取り戻し、家族同士のつながりも新たにする3日間になりました。
きたもっくが大切にしてきた地域資源を感じられる焚き火体験をぜひ体験しませんか?
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大学時代に掌で花開く雪を見て「どうしたら祖先に雪を残すことができるだろうか」という問いを持って、いまだに考え続けている。北海道大学農学部卒、2010年「世界を変えるデザイン展」を企画開催。2015年より予備校にて探究型プログラムを開発。「進路選択ツールキット(高校生向け)」で2022年グッドデザイン賞、『もし「未来」という教科があったなら』(学事出版、編著)を出版。2023年より(株)日本総合研究所創発戦略センターに所属。2024年北陸先端科学技術大学院大学博士前期課程修了。「総合的な探究の時間」に取り組む教員を対象としたエスノグラフィを行なった。