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2026.06.05 | アーヤ 藍

沖縄慰霊の日に読みたい〜若者たちが「日常から沖縄戦を語り継ぐ」〜

昨年で第二次世界大戦の終結から80年が経ち、戦争体験者の話を直接聞ける機会はごくわずかになっています。直接体験していなくても、あるいは体験者から直接学ぶ機会がなくても、戦争の記憶を受け継ぎ、「過ちを繰り返さない」ことはできるのでしょうか——。

年々重みを増すこの問いに、沖縄出身、あるいは沖縄に深い思いを寄せる1990年代生まれの8人の執筆者たちが向き合ったZINEが、昨年発刊されました。『あなたの沖縄』第3号「日常から沖縄戦を語り継ぐ」です。

あなたの沖縄』主宰の西由良さんはこう書いています。

来年沖縄は本土復帰50年。正直、1994年生まれの私は上の世代ほど復帰に思い入れはない。それでも、沖縄について思うことはたくさんある。生まれた時から沖縄は日本で、頭の上では米軍機が堂々と飛んでいた。
90年代生まれの私の世代からみた沖縄。戦争も復帰も知らない、私たちが見てきた沖縄のこと。

2021.8.21「はじめのご挨拶」より

体験者の方々が残した言葉には、私たちの想像も及ばない悲惨な場面が刻まれている。受け止めることにすら覚悟が必要で、それを自分の言葉で語り継ぐことは容易ではない。しかし、語り継がなければならない。(中略)私たちが次世代へと繋がなければ、体験者の方々が残した言葉は、失われてしまう。

ZINE vol.3「巻頭エッセイ」より
こちらに全文掲載されています

戦争体験者への謙虚さを心に留めつつも、「体験していない」ことを「語り継げない理由」にはしない。その姿勢が、本誌の大きな魅力の一つです。

執筆者たちのアプローチは実に多様です。沖縄戦や基地問題に関わる作品を創作している同世代の小説家と劇作家への対談インタビューを企画した人もいれば、認知症によって正確な話を聞くことが難しくなった祖母を囲み、親類それぞれが祖母から聞いてきた戦争周縁の記憶を持ち寄る座談会を行った人もいます。あるいは、戦時中の証言をもとに、人々が戦火から逃れた道のりを実際にたどりながら、当時へ思いを寄せる人もいます。

誌面より

戦争の記憶の継承となると、アカデミックな形で残されたものを思い浮かべがちです。しかし本誌は、戦争の記憶への手の伸ばし方も、誰かへ届ける方法も、実は多様であることを感じさせてくれます。「知りたい」「大切に考えたい」「忘れたくない/忘れられたくない」という小さくとも切実な第一歩こそが、記憶を繋ぐ大事な原動力なのだと、勇気づけられます。

同時に、記事には執筆者たちの率直な迷いや葛藤も綴られています。聞き取りが間に合わなかった後悔や、自分が解釈して伝えることへの不安、加害/被害の歴史の複雑さに直面した時の戸惑い——。そうした揺らぎも描かれているからこそ、書き手と読み手の関係を「教える側と教わる側」ではなく、「ともに語り合う仲間」のように感じさせてくれるのも新鮮です。

そして本誌のもう一つ大きな魅力は、タイトルにある「日常から」という視点を大事にしている点です。

例えば、戦後、栄養失調で二人の子どもを亡くした祖母が、「ひもじい思いをしないように」と、ことあるごとに食べ物を振る舞い、食べることを大切にしなさいと繰り返し語っていたというエピソード。あるいは、亡き祖父が、様々な事情から戦後に名前を変えた少なからぬ人たちの一人だったことを、家族の誰も長い間知らなかったという話。こうした教科書には記されないような「日常に垣間見えた戦争の記憶」は、戦争が市井の人たちの日常に、どれほど深く、広く、「傷」を残したのかを伝え、戦争というものをより立体的に理解することにつながっていくはずです。

また、修学旅行生に向けて平和ガイドを行っていた大学サークルのメンバーたちの対談や、学校での平和教育を模索する小学校教諭たちの対談など、「現在の日常」のなかで戦争を語り継ぐ実践にも触れることができたり、米軍基地や自衛隊のミサイル配備など、「今の日常」に存在し続けている戦争について考えさせられる記事も収録されています。

誌面より。厳しい戦後の時代を生きた”祖母”の思い出の味のレシピも

記事に綴られている日常は、どれも私たち自身の日常と地続きのものとして感じられます。そのため、一冊を読み終えた時には、戦争の記憶が「過去」ではなく「現在」と一本の線でつながっているような感覚を覚えます。

間もなく今年も、沖縄戦などで亡くなった方々を悼み、世界の平和を願う「慰霊の日」、6月23日を迎えます。非核三原則の見直し議論を始め、「もはや戦後ではなく、戦前を生きているのではないか」と思わずにはいられないような状況が続く今、唯一の地上戦を経験した沖縄の戦争の記憶に、今を生きる若者世代とともに耳を傾け、あらためて「戦争とは何か」を考えてみてはどうでしょうか。

今年6/23(火)19時〜21時に東京でワークショップ「東京から書く慰霊の日」が開催されます。「あなたの沖縄vol.3」にも対談インタビューが掲載されている、今年の三島賞を受賞した作家・豊永浩平さんがゲストです。こちらもぜひチェックしてみてください!

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アーヤ 藍
アーヤ 藍(あーやあい) 映画探検家

在学中にアラビア語の研修で訪れたシリアが帰国直後に内戦状態になり、シリアのために何かしたいという思いから、社会問題をテーマにした映画の配給宣伝を行うユナイテッドピープル株式会社に入社。同社取締役副社長を務める。2018年に独立。映画の配給・宣伝サポート、映画イベントの企画運営、雑誌・ウェブでのコラム執筆などを行う。アーヤはシリアでもらった名前。大丸有SDGs映画祭アンバサダー。著書に『世界を配給する人びと』(春眠舎)。

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