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2017.09.22 | 笹尾 実和子

正解のない世界の課題と向き合う「ワールドピースゲーム」 考案者ジョン・ハンター氏に聞く子どもの学びに必要なこと


「ワールドピースゲーム」考案者ジョン・ハンター氏 ©ワールドピースゲーム・プロジェクト

あなたは「世界平和」のためには、どうしたらいいか真剣に考えたことはありますか? 日本にいると、「難民」や、特定の民族を狙った人権侵害行為である「民族浄化」など、国際的な問題は遠い国の話のように感じてしまいがちですが、決して他人事ではありません。こういった世界が抱える複雑な問題を自分事として考えることができるプログラムがあります。教育型シュミレーション「ワールドピースゲーム」です。

私が初めてワールドピースゲームのことを知ったのは、3年前に放映されたNHKのスーパープレゼンテーションでした。たまたまつけていたテレビから、小学4年生の子どもたちがいつもの教室で人類永遠のテーマである「世界平和」のために、熱心に語りあい、深く学ぶ姿をみて、画面に釘付けになりました。MITメディアラボ所長の伊藤穣一さんも、「今までにみた授業のなかで一番おもしろい授業」と絶賛したほどの授業です。(詳細はこちらへ)まずはぜひ、ジョン・ハンター氏の素晴らしいTED TALKsをご覧下さい。

米国バージニア州の小学校教師だったジョン・ハンター氏は、1978年、子どもたちのためにワールドピースゲームの原型となるプログラムを考え、授業で実施。以来、改良を重ねながら、「ワールドピースゲーム」を約40年間、世界各国で続けています。

ワールドピースゲームは、仮想世界で各国の様々な課題解決を目指すシュミレーションゲームです。ゲームでは、宇宙、空、陸と海、海底の4層のタワー(120センチ×120センチ×150センチ)が仮想世界として現れます。参加者は仮想の4カ国の首相、国連、世界銀行、武器商人のリーダーなど、それぞれが役割を担ってチームを作り、様々な交渉・決断を下し、複雑に絡み合う自らの国と世界の課題解決を目指します。ゲームに勝つためには、すべての課題を解決すること、そして、すべての国の資産がスタート時より増えていることが条件になります。

参加者は正解のない問いと向き合い、様々な立場の人と議論しながら問題解決を目指すことで、交渉力・決断力・思考力・恊働する力など、これからの社会に必要なスキルを身につけていきます。


4層のタワーを使って説明するジョン・ハンター氏と子どもたち ©ワールドピースゲーム・プロジェクト

2017年8月7日〜11日の5日間、日本で初めてジョン・ハンターが東京でゲームをファシリテートする「ワールドピースゲーム・アジア2017」が開催されました。インターネット上で参加者を募り、当日は26人の小・中学生が集まりました。5日間全てのプログラムがオールイングリッシュで実施され、難民問題や水の権利闘争、エネルギーなど23の課題について子どもたちだけで議論します。課題の中には、サイバー攻撃やドローン攻撃など、最近のテーマも盛り込まれていました。議論の様子は大人も顔負け!と思うほど、参加者全員が積極的に自分の意見を英語で発表していきます。ここでは、「議論が苦手」と言われる日本の子どもたちの姿はどこにもありませんでした。5日間(15〜20時間)という長い時間、議論を重ね、制限時間内にすべての課題を解決した子どもたちの元気な「勝利宣言」で、ゲームは終了しました。(当日の様子はこちらでご覧頂けます)


ゲーム中は基本的に子どもたちだけで議論をします ©ワールドピースゲーム・プロジェクト

それぞれ国や立場が違う中で、自分の意見をぶつけ合います ©ワールドピースゲーム・プロジェクト

ゲーム終了後、ジョン・ハンター氏に日本の子どもたちの反応について、聞いてみました。「子どもたちはどの国でも子どもです。子どもたちはみんなハッピーでいたいという欲求がある。日本の子どもたちはニュースを通じて、今ある世界の危機を身近な問題として理解し、課題に向き合っていると感じました。今回のゲームで特に印象に残っていることは、ゲームの序盤、グリーンビル(仮想の国の名前)の首相が、すごく攻撃的で軍備を揃えるのにたくさんのお金を使っていました。しかし、ゲームが進むにつれて、戦争を起こすためには膨大な資金が必要になり、戦争はあまりいい考えではないことに気づきました。彼が実際に戦争を体験するのではなく、安全なゲーム環境の中で、自分自身で気づいたことが、とても重要なことだと思っています」


子どもとしっかり目を合わせて話すジョン・ハンター氏©ワールドピースゲーム・プロジェクト

ゲームの様子を見ている中でひとつ気づいたことがあります。ジョン・ハンター氏が子どもと向き合う時、必ず子どもたちの顔の高さに合うように足を折り、しっかりと目を見て話していました。子どもたちとコミュニケーションをとる際に大切にしていることを聞くと、「私だけではなくて、すべての先生が子どもたちのことを考え、いい関係作りをしようと一生懸命努力しています。一人ひとりを尊重し、愛する気持ちを持っていれば、先生と生徒の良い関係が築かれていくのだと思います。上下関係をつくってはダメなんです。私は彼らを友達として対等にみています。彼らが小さいからあまり考えがないだろうと思いがちですけど、大人と同様に賢い知恵や知識を持っています。彼らから、たくさんの ことを学びました。私にとっては、子どもたちが先生です」

この言葉を聞いた時に、30歳以上も歳が離れた子どもたちに敬意と感謝の心を忘れないジョン・ハンター氏の態度に感動しました。優れた指導者は、決して子どもを子ども扱いしない。子どもたちとの関係をつくる上で対等な立場で接することがとても重要だと気づかされました。


日本でワールドピースゲームの普及をすすめる谷口真里佳さん(左)と望月理奈さん(右) ©ワールドピースゲーム・プロジェクト

また、今後もワールドピースゲームを世界中の子どもたちに広げていきたいと語ってくれたジョン・ハンター氏。そのためには、各国でこのゲームを実施できる先生を増やしていかなければいけません。現在日本では、日本人初の認定ファシリテーターになった谷口真里佳さんと望月理奈さんの2人が中心となり、ワールドピースゲームの普及活動をしています。今後、ますます国際社会が進む中で、「ワールドピースゲーム」の需要は高まっていくでしょう。このゲームを通じて、自分たちの未来を考え、世界の課題解決に挑戦する日本の子どもたちが増えてほしいです。


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笹尾 実和子
笹尾 実和子(ささお みわこ) Think the Earth 広報

夏生まれの横浜育ち。新卒で人材派遣の会社に3年勤め、行く先を決めず退社。その後の一人インド旅で全てをリセットし、小さくも面白い会社でインターンを始めたことで仕事観が変わる。そんな中Think the Earthと出会い、ここなら小学校からの夢が叶う!と気持ちひとつで飛び込み入社。現在はひとり広報として奮闘中。話すよりも聞く方が得意。

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