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クリスマスごとに2000万本以上がごみに ! ツリーは使い捨てからシェアの時代へ
クリスマスは、多くのドイツ人にとって一年で最も重要な伝統的な祝日。しかし、いまクリスマスにまつわる様々な伝統と風習に、大きな変化の波が来ているようです。実は、環境大国ドイツで、大多数の人が使い捨てをしているのがクリスマスツリー。毎年約2000万〜2800万本という膨大な数のクリスマスツリーが伐採され、すぐまた廃棄されているのです。
「香り高い、生木のクリスマスツリーは、ドイツのクリスマスの中心的存在です。特に今日、デジタル化された暮らしの中で忘れていた自然を、森とのつながりを思いさせてくれるから、クリスマスツリーは生木でなきゃ! という人は多いのでは」と話すのは、アンドレアス・フレードリッヒさん。ベルリン市内の工場の屋上で、浜辺で育つ植物を栽培するなど、気候変動を考えたアーバンガーデニングに取り組んでいる彼は、12月にはWeihnachtsurwald(ヴァイナハツウアヴァルト=クリスマス原生林)という、サステイナブルなクリスマスツリーの販売を行っています。
「ヴァイナハツウアヴァルト」のクリスマスツリーは全て鉢植え。お客はツリーを買う際にデポジットを支払い、クリスマスが終わった2〜3週間後にきちんと手入れをした状態でツリーを返却すればデポジットが返ってくるというシステムです。ツリーは再び森に植えられ、成長していきます。
「子どもの頃から、クリスマスが終わったらツリーを捨ててしまうという風習が理解できなかったんですよ」とフレードリッヒさん。最初のアイデアは高品質なモミの苗木を販売するというものでしたが、あまりに高く、環境意識の高い人でもちょっと手が届かない価格帯に。そこで彼は、「EUクリスマスツリー規格」から外れた、左右対照ではなかったり、ちょっと曲がっていたりするモミの木を使うことを思いつきました。「飾り付けには最適ではないかもしれませんが、生きているものですからそういうものですよ! 苗木を販売して、クリスマスが終わったら庭に植えてもらうというアイデアもありましたが、広いベランダや庭がある家ばかりではありませんから。最終的に、鉢植えのツリーをシェアするという考え方にたどり着いたのです」
NABU(ドイツ自然保護連盟)は、ドイツ市場に出回っているツリーの9割近くが大規模なツリー農場のもので、殺虫剤や除草剤、また色を濃くするための化学肥料が使われていると指摘しています。フレードリッヒさんは、デンマークやベルリン近郊のブランデンブルクの森で育った、農薬不使用のものだけを売っています。
「このツリーのうち、10本に1本だけでも樹齢100年まで育つとしたら、地球規模での二酸化炭素排出バランスの改善が見込める」とフレードリッヒさんは胸を張ります。
サステイナブルなクリスマスツリーへの意識は高まっているようで、様々なアイデアが生まれています。例えば、ツリーの形を整える際に出た端材を木切れに差し込んで作ったツリーなど。また、オーガニック認証をつけたツリーも今年は市場で見かけるようになりました。持続可能な森林管理に努めるPEFC森林認証や、BUND、Greenpeaceといった環境団体とともに作成した、有機森林利用のガイドラインに沿って農薬、化学肥料を使わないだけでなく大規模伐採などを行わずに育てられたドイツ有機農業協会のNaturland認証を取得したツリーなども登場。
究極には、ツリーを買わないのが一番良いという意見もありますが、より厳しいロックダウンが始まったドイツでは、いつもよりかなり早めにツリーを買って、家族でのおうちの時間を楽しみたいという人が増えているよう。こんな時だからこそ、サステイナブルなクリスマスツリーを買って、長く楽しみ、また次のクリスマスに備えたいものです。
良いクリスマスを!
ドイツ ベルリン在住 東京出身。2000年からベルリン在住。ベルリン美術大学在学中から、ライター活動を始める。 現在雑誌『 Pen』や『 料理通信』『 Young Germany』『#casa』などでもベルリンやドイツの情報を発信。テレビのコーディネートも多数。http://www.berlinbau.net/